埼玉県の浦和にあるパーソナルジム BEYOND 浦和店の植杉と申します!
筆者が勤めるパーソナルジムでは、トレーニングや食事習慣の改善を通して皆様の悩み解消や目標達成に向けたアプローチを行っています。
今回のテーマは
フィジークやスポーツモデルにおける減量の重要ポイントです!
5月に入っていよいよ各団体のコンテストが本格始動してきました。
この時期になると多くのトレーニーが減量末期に入り始めますが、フィジークやスポーツモデルで求められる最後の一絞りを追い求めるフェーズが最も辛い&難しいと言われています。
そこで本記事ではフィジークの地方大会で3度優勝、日本大会での優勝を経験している筆者がコンテストにおける減量でしっかり絞り切るポイントをお伝えします。
初めてフィジークやスポーツモデルのコンテスト減量に挑戦している方や、減量末期で苦戦している人はぜひ参考にしてください。
※本記事の内容はコンテストに向けて体脂肪率を10%未満に仕上げていく人向けの内容なので、一般的なダイエットには必ずしも当てはまらない点だけご了承ください。
コンテストの減量とは
一昔前までコンテストといえばボディビルのイメージでしたが近年はフィジークやスポーツモデルといった部門も広まっており、年々競技人口や開催されるコンテストが増えてきています。
これらの部門はいずれも皮一枚(体脂肪率5%未満)の世界まで絞り込み、その絞りが前提にあった上で筋肉量やバランス、そして表現力などで順位が決まる競技です。
部門によって求められる筋肉量やポージングなどは異なりますが、どの部門にも共通して言えるのがきちんと体脂肪が落ち切った状態(=絞り切る)であることです。
このレベルまで仕上げるには一般的なダイエットの方法だけでは到達は困難なため、栄養面と運動面でのあらゆる工夫を凝らしながらコンテストに照準を合わせにいきます。
そのためフィジークやスポーツモデルで入賞レベルまで目指したい人はまずはこの絞りの基準を満たせるように減量に励むことになります。
コンテスト減量初期のポイント
上記の通りフィジークやスポーツモデルのコンテストの基準を満たすには体脂肪率5%前後を狙いにいくことになります。
この領域まで絞るにはカロリー設定や期間設定、栄養バランスなどなどあらゆる面で計画を練っていく必要があります。
減量の期間とペース
出場するコンテストが決まったらまずは減量期間を設定します。
仕上がり体重の目安を決めて、そこから月に2~3kgのペースで減量を進めて間に合うように設定します。
そして減量期間は長くても6ヶ月以内に収めることです。
例)現在70kgで仕上がり予想が62kgの場合、月に2kgの減量で4ヶ月というイメージです。
ここでのポイントは月に2~3kgのペース & 期間は最大でも6ヶ月までとして計画を立てることです。
月あたりの減量スピードが早すぎると筋量の減少リスクやカロリー収支のマイナス幅が大きすぎることによる心身の疲弊から来る離脱リスクが上がります。
また、減量期間が長すぎるとホルモンバランスの乱れによる筋量減少や活力低下を招きます。
これらを考慮すると、最大減量幅は12kgに収まるように増量期の体重コントロールを意識する必要があるということがわかります。
※コンテストに出る人は増量期も計画的に体重管理をしましょう。
減量期のカロリー設定
目標とするコンテストと減量期間やペースを定めたら次は食事のカロリー設定をしましょう。
カロリー設定をするには自分の活動代謝(=消費カロリー)を知る必要があります。
手順は以下の通りです↓
①体組成計で測定
②除脂肪体重の算出(機械によっては結果項目に記載あり)
→体重×体脂肪率で体脂肪量を算出する。
→体重-体脂肪量で除脂肪体重が出ます。
③除脂肪体重に35~40をかけた値が減量初期の摂取カロリー
→筋トレ頻度が週4以上であれば40を、週3未満であれば35をかけましょう。
※その他の活動量が多い場合はそれも考慮してやや多めの値をかけるのもありです。
上記の方法で算出した値を減量初期の摂取カロリーに設定してみましょう。
計算すると
意外と食べられるな!
と感じるはずですが、最初はこのくらいがちょうど良いのです。
むしろ最初から基礎代謝くらいの摂取カロリーしか摂っていないとすぐに停滞期に入り、そこでさらに摂取カロリーを減らして代謝が落ちればあっという間にゲームオーバーです。
後述しますがフィジークやスポーツモデルのコンテストに向けた減量はいかに手札を多く残せるかが鍵です。
まずは焦らず上記の方法でカロリー設定を。
PFCバランスの設定
コンテストに向けての期間や摂取カロリーが計算できたら今度はPFCバランスの設定です。
栄養管理において摂取カロリーの次に大事なのが栄養バランスです(2,000kcalを全部胸肉で摂ってもダメなのは想像に容易いです)。
①たんぱく質
→体重×1.5g~2g
②脂質
→30g
③炭水化物(糖質)
→摂取カロリーからたんぱく質と脂質のカロリーを引いた残り。
例えば体重60kgで摂取カロリーが2,000kcalの場合は以下のようになります。
①たんぱく質=120g(480kcal)
②脂質=30g(=270kcal)
③糖質=2000kcal-480kcal-270kcal=1,250kcal
→糖質1g=4kcalなので1,250÷4=312gが糖質量
まずはこのようなPFCバランスからスタートしてみましょう。
もちろん栄養の代謝の得意不得意(栄養との相性)は人それぞれなので2週間ほど様子を見て計算通りに減量が進まない場合はバランスを変えてみるのが良いでしょう。
コンテスト減量中期 〜停滞の攻略方法〜
コンテストで求められるレベルまで体脂肪率を下げるには停滞は避けて通れないと考えておきましょう。
※時々停滞なく仕上がる人もいますが少数派であり、基本は停滞は訪れるものと認識しておいてください。
特に初めてフィジークやスポーツモデルに出る人は停滞期に対して過剰にネガティブに捉えて「摂取カロリーを下げる」「運動量を上げる」といった方向に走りがちです。
しかし、これらの追い込むような突破方法はかえって代謝を落としたり筋肉量を落とすリスクがあるので基本はNGとします。
ここからは正しく停滞を乗り越えるための手法を紹介していきます。
見た目が変わっていれば停滞ではない
停滞の突破方法ではありませんが、そもそも停滞の捉え方を間違えている人が多いので敢えてここに記載します。
コンテストに向けた減量において、体重は変わらなくても見た目が絞れてきていればそれは停滞ではありません。
やはり減量中は体重というわかりやすい指標に目が行きがちですが、本質的に絞れているかどうかは見た目の質感で判断するべきです。
この現象は、ある程度絞れてきた(体脂肪率10%以下)人にはよくある話です。
「1週間くらい体重は変わっていない、だけど見た目は絞れている気がする…。」
このパターンは停滞ではないので何も対策せずにそのまま過ごしてください。
数日もすればある日突然体重にもその変化が反映されます。
2週間程度は待て
停滞の攻略には辛抱強さも必要です。
そもそも停滞の定義ははっきりしていませんが、おおむね2週間にわたって見た目も数字も変化しない場合を指すのがコンテスト減量でのスタンダードです。
よくあるのが「3日間全然体重が減らない…」という悩みですがこれはそもそも停滞でもなんでもありません。
毎日体重を記録していくとわかるのですが、体重は日々小さな増減を繰り返しながら徐々に減っていくものです。(グラフにするとジグザグしながら右肩下がりになるイメージ)
よって2週間までは体重が変わらなくても焦る必要はありません。
繰り返しますが、コンテスト減量の鍵は「いかに手札を残すか」です。
PFCバランスの見直し
2週間以上体重も見た目も何の変化もなければいよいよ停滞突破のための策を打っていきましょう。
とはいえここでいきなり摂取カロリーを減らしたり運動量を大幅に増やすのはNGです。(代謝低下によって詰み状態になる恐れがあるためです)
ということでまず最初に試したいのがPFCバランスの見直しです。
三大栄養素の代謝の得意不得意は個人差が大きいため、糖質の代謝が得意な人もいれば脂質の代謝が得意な人もいるわけです。
例えば最初は脂質30g、糖質300gでスタートしたもののうまくいかなくなった場合は、脂質を50gに増やしてその脂質由来のカロリー(180kcal)分の糖質を減らすなどして、総カロリーは同じだが栄養バランスが異なる状況を作るイメージです。
理論上の設定カロリーに間違いはなさそうなのに思うように減量が進まないパターンではこの方法から試してみましょう。
摂取カロリーの調整
PFCバランスの見直しでも効果が見込めない場合は摂取カロリーをやや減らしてみましょう。
この時の注意点はいきなり大きなカロリー減をしないこと。
まずはたんぱく質か糖質から100kcalほど減らしてみて様子を見てみましょう。
闇雲に大幅なカロリー減を行うとすぐに代謝の低下が起きて打つ手がなくなるので要注意です。
運動量の増加
停滞攻略の手法には運動量の増加もおすすめです。
理論上、体重が減るかどうかはカロリー収支がマイナスであれば良いので消費カロリーが増えればその分絞れやすくなるというロジックです。
この際の運動は有酸素運動よりも筋トレのボリュームあるいは頻度を上げる方法を推奨しています。
というのも、フィジークやスポーツモデルに向けた減量の場合はとにかく筋量を残して絞っていく必要があります。
筋量を維持するには適切な栄養管理はもちろんですが、脳に「筋肉がないと危ない」と認識させることもまた重要です。
よって、限られた摂取カロリーで運動量を確保するのであれば有酸素運動よりも筋トレに重きを置く方が筋量を維持しながら停滞を打破できる可能性が高まるという考え方です。
※減量中はオーバーワーク症候群には注意です。
カーボリフィード
コンテスト減量となると体脂肪率を極限まで落とすことになりますが、体脂肪率が10%を下回ると身体は命の危機から逃れようと代謝を落とそうとする作用が強まります。
ここで落ちた代謝を取り戻す or 代謝の低下を未然に防ぐ方法として食事量を増やす手法があります。
この手法は主に「チートデイ」「クリーンチート」「カーボリフィード」の3種類があります。
チートデイとクリーンチートはいずれも体脂肪の増加リスクや減量の遅延リスクがある点を考えると安全に代謝の回復を見込めるカーボリフィードがおすすめです。
カーボリフィードは、たんぱく質や脂質の摂取量はいつも通りで糖質を体重×6~10g摂取する手法です。
この方法の良いところはジャンクを食べないことで浮腫みや内臓の不調の防止やカロリー過多による減量の遅れを防げることです。
筆者は体脂肪率10%を切ると週に1度のカーボリフィードを取り入れます。
こうすることで筋肉中のグリコーゲンレベルが戻って筋トレ強度も上がり、代謝の低下も防げるので非常に有効な停滞打破方法だと感じています。
心も満たすという意味では何でもOKなチートデイの方が強いですが、フィジークやスポーツモデルを目指すのであればカーボリフィードを優先するのが良いでしょう。
摂取カロリーを上げる
減量の停滞の原因の多くは代謝の低下によるものですが、これを打破するためのあらゆる手法を試しても絞れない場合は一旦摂取カロリーを上げる必要があります。
何をやっても停滞が抜けられないという状況は、代謝が下がり切っていることを示します。
こうなると運動量を増やそうが、1日だけチートデイを行おうが簡単には代謝は戻りません。
この状況であれこれ試したところで代謝が戻らない=いつまでも絞れない ということになるのでこうなった時点で摂取カロリーを上げて代謝を戻す期間を設けなければなりません。(いわば最終手段です。)
まずは現状の摂取カロリーよりも200〜300kcalほど多く摂取する期間を2週間ほど設けます。
この期間中に代謝が回復すれば、回復できしだいまた徐々に絞れるようになっていくのでそこまでは一旦減量は中止という意識で過ごしましょう。
一見遠回りのようにも感じますが、代謝が下がり切ると本当に手の打ちようがありません。
本来はそうならないことが理想ですが、万が一何をやっても絞れない状況に陥ったらこの方法をお試しください。
最初の減量期間の計画に余裕があればこうした期間があっても問題なくコンテストに間に合うはずです。
コンテスト減量末期のポイント
ここからは減量末期のポイントについて解説します。
減量末期は仕上がりの約1ヶ月前を指すことが多く、体脂肪率でいえば6~8%の状態になっているはずです。
この段階まで来たらそれまでの減量初期〜中期とは少し異なる過ごし方が必要です。
仕上がりまでのあと一歩で大きな失敗をしないためにも減量末期の正しい過ごし方をぜひ把握しておいてほしいと思います。
辛い思いをする≠仕上がる
コンテストに向けた減量末期で注意したいのが、辛い≠仕上がる であるということです。
フィジークやスポーツモデル選手のYouTubeやinstagramを見ると減量末期は摂取カロリーが1,000kcalで毎日有酸素運動を3時間やって…といった具合にフラフラになりながら過ごしている光景を目にしますが、必ずしもそこまでやらなければ仕上がらないというわけではありません。
事実として、体脂肪率5%付近の世界に行くには相当な努力が必要ですが少なくとも摂取カロリーを基礎代謝以下に設定したり有酸素運動をゴリゴリにやり込む必要はありません。
後述しますが、減量末期はむしろ枯渇した筋肉内に栄養を送り込んで筋肉を隆起させる期間だと捉えてほしいです。
体脂肪率5%付近までは基本的なカロリー設定や停滞打破の手法で到達できるので、それで5%前後まで落とせれば除脂肪のフェーズは終わりです。
除脂肪フェーズがコンテストの2週間前くらいまでに終われば、そこからはキツいことをするのではなく、むしろ栄養を送り込んで筋肉が元気な状態を作る方が勝率は断然上がります。
除脂肪フェーズ終了の基準
先述の通り、コンテストの2週間くらい前までには除脂肪は終えておくのが理想です。
除脂肪終了の目安はヘソの横や腰の横をつまんだ厚さが4mm(手の甲よりやや厚いくらい)ほどまで皮膚が薄くなっていればOKです。(スポーツモデルの場合はハムやお尻が4mmくらい)
上記の基準を満たしていればコンテストに向けた除脂肪は終了として良いでしょう。
逆にこの領域まで絞れた人はこれ以上アンダーカロリーで過ごしたり有酸素運動を行なってもただ疲労が蓄積して浮腫みが生じたり筋量が減少する恐れがあります。
除脂肪終了の基準を満たした場合は後述の過ごし方で筋肉の隆起を狙うフェーズ(=ピーキング)に向かいましょう。
ピーキングでバリバリのコンディションへ
除脂肪が終わったら最後はピーキングで最高のコンディションを作ります。
フィジークでもスポーツモデルでもトップ選手はみんな皮膚が筋肉に張り付いたようなバリバリのコンディションですよね。
あのコンディションはただ体脂肪率が低いだけでなく、栄養が行き渡った筋肉が最大限に隆起することで皮膚を押しあげて出来上がっています。
逆にいえばただ体脂肪率が低いだけで筋肉が萎んでいる状態では、皮膚が筋肉に張り付くようなコンディションは作れないということです。
だからこそ我々は余裕を持った減量計画を立てて、コンテストの2~4週間前には除脂肪を終えておく必要があるのです。
糖質量を徐々に増やして筋肉を隆起させよ
「除脂肪が終わったらピーキングに入りましょう」というお話をしたので、実際にどのようなことをするのかの解説もここで行います。
まずは糖質量を30gほど増やしてみることから始めます。
糖質を摂取することで筋肉内にグリコーゲンとして蓄えられ、グリコーゲンが1g蓄えられると水分も3g貯蔵されます。
この反応が起きることで筋肉が膨らんで皮膚を押し上げる(=デカくそして絞れて見える)という状態を作れます。
糖質を30g増やしてみて浮腫みやお腹の不調がなければそこからまた30g追加して…と日々繰り返してコンディションを観察します。
糖質量を増やしていくとどこかで筋肉のハリが出たり血管がバリバリになるはずなのでそこまで到達したらその時の糖質量で残りの期間を過ごします。
もしも浮腫みが出てくる場合は糖質の摂りすぎなので翌日に30gほど糖質を減らしていくイメージです。
この手法を使えばコンテストの2日前くらいからドカンと摂取カロリーを増やす「カーボアップ」を行わなくて済みます。
短期間で一気にハリを取り戻すようなカーボアップはむくみのリスクが高いので基本的には早めに除脂肪を終えてピーキング期間を作って徐々に糖質量を取り戻すのが理想です。
トレーニングは追い込みすぎない
ピーキング期間に入ったらトレーニングは追い込みすぎないよう注意です。
理由は「過度な疲労は浮腫みにつながる」「仕上がったのに運動量を増やす理由がない」の2点です。
コンテストが近づくとモチベーションが上がったり、低体脂肪率によるアドレナリン分泌などが原因でトレーニングも有酸素運動もめちゃくちゃに追い込めてしまうのですが、このフェーズでの無理な頑張りは非常に危険です。
せっかく除脂肪を終えてあとは筋肉の栄養レベルを回復させればバリバリのコンディションを作れるというこのタイミングでわざわざ運動強度を上げて浮腫みや疲労による不調を誘発するのは非常にもったいないです。
除脂肪が終わったら、はやる気持ちを抑えて筋肉の回復に努めましょう。
コンテスト2日前からは休め
除脂肪が終わり筋肉中の糖質量が増えてハリのある状態ができたら最後の2日程度は休むのが得策です。
最後の最後までトレーニングをハードにやっていると、疲労が抜け切らずに浮腫みが出たりポージングがうまく決まらない(=筋肉痛や疲労で力が入りにくい)というデメリットが生じます。
よって、コンテストの直前はトレーニングも有酸素運動も休みにして身体の回復に専念するのがおすすめです。
計画的な減量で最高のコンテストに
ここまでご覧いただきありがとうございました。
フィジーク、スポーツモデルのコンテストに向けた減量は長く険しい道のりですが、正しく計画を立てて状況に応じて最適な手札を使えるように事前準備をしておけば確実に素晴らしい仕上がりを実現できます。
これからやってくるコンテストシーズンを楽しく過ごせるように1人でも多くの方が正しく減量を進めてくださることを祈っています!
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